13話)夫婦の部屋へ
・・・・柔らかな照明の元、キングサイズのベットの上に横たわる人の姿が目に入る。
ドキッとなった。
ソロソロ・・と近づいてゆくと、当然その人は茉莉で、なんと彼女は眠っていた。
肩をポンと押すと、身じろぎしてシーツがはだけた。
ほのかなローズの香りが、彼女の体から立ち上がる。
ほっそりとした柔らかな肢体。身じろぎしたせいで、前合わせの夜着が少しはだけていた。
歩の目の前で、まろやかな肌がのぞく。
クラっとなる。
やっと自分のものにできた。
そうゆう気持ちで、茉莉の頬にキスをすると、うつろに瞳を開けた。
「茉莉・・。」
つぶやく歩を認めた彼女は、びっくりするくらいの厳しい瞳を向けたのだ。
そして手で払いのけると、
「何をするのよ。やめて」
と、はっきり拒絶の意思をみせた。
そして、彼女は再び目を閉じてしまう。
(・・・・)
歩は動けなくなってしまった。
「・・・・なぜ拒絶する。」
かすれた声でつぶやくものの、彼女からの応えはない。
「・・・私をものにしたかったら、河田の家を継ぐことね。って、言ったじゃないか。
だから俺、ここまできたのに・・・。」
言いながら、ハタと思い浮かぶ。
まるで一対の人形のようだと周囲にも思わせた、二人並んだ時の姿を・・。
茉莉は、彼の横に立ちたかったのかも知れない。
それが事実だとしたら、それこそ歩を、地獄の底に陥れるくらいの、衝撃的な出来事だった。
「・・・そんなにまで兄さんがよかったのか?
兄さんでなければいけなかったのか・・・。」
ささやき訴える歩の声は、まるで自身を切りつけるように響いた。